不動産売買契約におけるIT重説

2024年09月22日

令和4年から不動産売買契約においても、一定の条件のもとでオンラインでの契約が可能となりました。

具体的には、重要事項説明書や契約書の電子交付が認められ、ITを活用した重要事項説明(IT重説)が導入されました。この改正により、以下のような点が特徴的です。

 

1. **重要事項説明のオンライン化**

     従来は対面で行われていた重要事項説明が、オンラインで行えるようになりました。

     これにより、遠隔地にいる買主や売主もスムーズに契約手続きを進めることができま

     す。

2.  **書面の電子交付**

     契約書や重要事項説明書などの書類を電子的に交付することが可能となり、ペーパー

   レス化が進みました。

3. **クーリングオフの適用**

     オンラインでの契約でも、一定の条件下でクーリングオフが適用される場合がありま

   す。

 

このようなオンライン化により、不動産取引の利便性が大幅に向上しました。

しかし懸念されるものはないのでしょうか?

 

 

Q1:このIT重説では、図面を拡大したり、色を変えて示したりする必要があり、買主が

        十理解できるようにすることが条件となっていますが、このような条件の元以外の環 

        境でおこなわれた重説には、どのような問題が潜んでいるのでしょうか。

 

A1:IT重説(オンライン重要事項説明)には多くのメリットがありますが、適切な環境や

        条件が整っていない場合、いくつかの問題が発生する可能性があります。以下に、よ

        く見られる問題点とその影響を挙げます。

 

1. **通信環境の不備**

 ・ *問題点*:インターネット接続が不安定な場合、音声や映像が途切れることがあり 

                     ます。

 ・*影   響*:重要な説明が聞き取れなかったり、誤解が生じる可能性があります。

 

2. **視覚的な情報の不足**

 ・*問題点*:図面の拡大や色の変更が適切に行われない場合、視覚的な情報が不十分に 

                   な ります。

・*影   響*:物件の詳細や重要なポイントが理解しにくくなり、買主が十分に納得できな  

        いことがあります。

 

3. **双方向コミュニケーションの難しさ**

 ・*問題点*:オンラインでは対面に比べて、表情や反応を読み取りにくいことがありま

                   す。

 ・*影   響*:買主が疑問や不安を感じても、質問しづらくなることがあります。

 

4. **技術的なトラブル**

 ・*問題点*:機材の不具合や操作ミスが発生することがあります。

 ・*影   響*:説明が中断されることで、買主の理解が途切れる可能性があります。

 

5. **書類の電子交付の問題**

 ・*問題点*:電子書類の送付や受領に時間がかかる場合があります。

 ・*影   響*:契約手続きが遅延し、買主がストレスを感じることがあります。

 

これらの問題を防ぐためには、事前に通信環境を確認し、視覚的な資料を工夫することが重要です。また、買主がリラックスして質問できるような雰囲気を作ることも大切です。

 

 

Q2:買主側に小さな乳幼児がいて、泣き叫ぶ場面が多々あり、買主側の夫婦のいずれか一

        方がIT重説をおこなう部屋から退出を余儀なくされた場合、重説の内容が十分に     

        理解できない可能性があります。そのような場合は、宅建士は、IT重説を中止する必

        要はありますか。

 

A2:IT重説の際に、買主側に乳幼児がいて説明が中断される場合、宅建士は状況に応じて

        適切な対応を取る必要があります。具体的には、以下のような対応が考えられます。

 

1. **一時中断と再開**

・*対応*

     乳幼児が泣くなどで説明が聞き取りにくい場合、一時的に説明を中断し、状況が落ち着

   いた後に再開することが推奨されます。

・*理由*

     重要事項説明は買主が十分に理解することが求められるため、適切な環境で 行うことが

     重要です。

 

2. **再スケジュール**

・*対応*

     状況が改善しない場合、別の日に再度説明を行うことも検討すべきです。

・*理由*

     買主が説明を十分に理解できないまま契約を進めることは避けるべきです。

 

3. **対面での説明**

・*対応*

    オンラインでの説明が難しい場合、対面での説明に切り替えることも一つの方法です。

・*理由*

    対面であれば、買主の理解度を直接確認しながら進めることができます。

 

4. **録画の提供**

・*対応*

   説明の内容を録画し、後で確認できるようにすることも考えられます。

・ *理由*

     買主が後で再確認できるようにすることで、理解を深めることができます。

 

宅建士は、買主が説明を十分に理解できるように配慮し、必要に応じて柔軟に対応することが求められます。

 

 

Q3:上記のような状況下でIT重説を強行して、結局、買主が十分理解しないまま契約を続

   行し、後に買主が時間をかけて重説を理解した結果、契約の目的が達成できないと判

         断した場合、仲介業者や宅建士は、どのような責任に問われますか。

 

A3:IT重説を強行し、買主が十分に理解しないまま契約を続行した結果、契約の目的が達 

        成できないと判断された場合、仲介業者や宅建士には以下のような責任が問われる可  

    能性があります。

 

1. **説明義務違反**

・*責任*

      宅建士は重要事項説明を適切に行う義務があります。買主が十分に理解できなかった場

      合、説明義務違反として責任を問われる可能性があります。

・*影響*

      買主が契約内容を理解していなかったことが証明されれば、契約の無効や侵害賠償請求

    が発生する可能性があります。

 

2. **契約不適合責任**

・*責任*

      契約内容が買主の期待に適合しない場合、契約不適合責任が問われることがあります。

・*影響*

      買主は契約の解除、代金の減額、損害賠償を請求することができます。

 

4. **消費者契約法違反**

・*責任*

     消費者契約法に基づき、消費者が十分に理解しないまま契約を結ばされた場合、契約の

     無効や損害害賠償が認められることがあります。

・*影響*

     特に消費者保護の観点から、仲介業者や宅建士の責任が重くなる可能性があります。

 

4. **信義則違反**

・*責任*

     信義則に基づき、買主が不利な状況に置かれないように配慮する義務があります。

・*影響*

     信義則違反が認められた場合、契約の無効や損害賠償が発生する可能性があります。

 

これらの責任を回避するためには、買主が十分に理解できる環境を整え、必要に応じて説明を中断・再スケジュールするなどの柔軟な対応が求められます。

 

 

Q4:上記のような状況下でIT重説を強行して、結局、買主が十分理解しないまま契約を 

        続行し、後に買主が時間をかけて重説を理解した結果、契約の目的が達成できないと

        判断した場合、仲介業者や宅建士は、どのような責任に問われますか。

 

A4:仲介業者や宅建士が適切に重要事項説明を行わなかった場合、行政処分を受ける可能

        性があります。具体的には以下のような処分が考えられます。

 

1. **業務停止処分**

・*内 容*

     重要事項説明を適切に行わなかった場合、7日から30日間の業務停止処分が科されるこ

     とがあります。

・ *影 響*

     この期間中は不動産取引業務を行うことができません。

 

2. **指示処分**

・*内 容*

     軽微な違反の場合、業務改善の指示が出されることがあります。

・*影 響*

     指示に従わない場合、さらに厳しい処分が科される可能性があります。

 

3. **免許取消処分**

 ・*内 容*

     違反が重大である場合、宅建業者の免許が取り消されることがあります。

 ・*影 響*

     免許が取り消されると、不動産取引業務を継続することができなくなります。

 

これらの処分は、買主の保護を目的としており、適切な説明が行われなかった場合に発生するリスクを軽減するためのものです。仲介業者や宅建士は、買主が十分に理解できるように説明を行い、必要に応じて柔軟に対応することが求められます。

 

IT重説1
IT重説2