間に合わなかった相続対策
2021年06月21日
これは実際に弊社のお客様が体験された相続問題です。(個人の特定を避けるため名称等は変えております)
「相続対策」と聞いて、「資産がないから関係ない」と思った皆様に聞いてほしい話です。
弊社のお客様である80歳の五郎さんと、75歳の花子さんは仲睦まじいご夫婦でした。このご夫婦にはこどもはいません。
ある日、花子さんから「夫が亡くなったら、この家はどうなるの?」とご相談をいただいたのが始まりでした。
ご夫婦の資産は預貯金(3,000万円程)とご自宅(時価想定1,000万円)
ご自宅は土地・建物ともに夫 五郎さんの名義です。
資産がこの価格ならば相続税はかかりません。
五郎さんの両親はすでに他界していますので、五郎さんの兄弟たちが法定相続人になります。
兄弟が亡くなっている場合には、甥姪に代襲相続されます。
よって、五郎さんの法定相続人は配偶者である花子さん、ご存命の兄弟 三美さんと、甥姪6名を合わせた8名です。
ここまでご案内したところで、花子さんは不安そうに「数十年前に死んだ兄のところの甥姪なんて、今どこにいるかも知らないわ」とつぶやきます。
この場合、どうしたらいいのでしょう?
答えは「遺言書を準備する」です。
兄弟姉妹には遺留分がありませんので、代襲相続した甥姪であっても同じです。
「自宅(または全財産)を妻に」という内容の遺言書があれば問題なく花子さんがご自宅を所有できるとの案内をいたしました。
花子さんは霧が晴れた顔で、さっそく五郎さんに遺言書を書かせるとご帰宅されました。
ところが、現実はときに非情なもので、遺言書を作成しようとした矢先、五郎さんは永い眠りについてしまわれました。
結局、花子さんは膨大な量の戸籍をとりよせ、法定相続人全員を探すところから相続手続きを行っておられます。(自分では難しく司法書士が対応にあたっています)
凍結された五郎さんの定期貯金は解約することができず、
亡くなった五郎さん名義のままのご自宅にひとりでお住まいです。
相続対策は「税金対策」との誤った情報をお持ちの方がいましたら、今すぐその考えを捨ててください。
本来の相続対策の順番は
① 資産の全容を把握する(査定やROA診断で分析)
② 遺し方を決める(物件の取捨選択や誰に遺すか)
③ 必要なら税金対策(資金作り・節税対策)
大切なことは、家族や遺したい方がスムーズに資産を受け取れる準備を整えておくことです。
相続税の課税がなくても、相続対策は必要なのです。
今回の五郎さんの事例は、争いに発展する以前の、相続人を把握するところで苦労しております。
また、相続税がかかる方は事前に準備している方が多く、相続の財産分与で争う事例の大部分は非課税の方々です。
離婚なども増えた昨今、複雑な家族構成の方も増えていますので、誰に遺したいかの意思を遺言書に書く必然性はますます高まっています。
最後に、このコラムは「誤った認識で相続手続の苦労する方がひとりでも減るならば」と、ご親族より許可を得て掲載させていただきました。
皆様の相続対策を変えるきっかけになれば幸いです。
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