相続後の手続きが変わります
2022年02月28日
本日、「宅建Dr. マル秘レポート 2022年3月号」を配信♪
相続といえば・・・今年、相続登記申請に関する法改正が公布されたことをご存知でしょうか。
今回のコラムは、現在はまだ義務ではありませんが、不動産相続後の手続きの変更点や社会背景を考えます!
そもそも「不動産登記簿」とはなにか
「不動産」の物的状況や権利関係を公示するために、登記所に備え付けられた書類をいう。
不動産登記簿には、土地登記簿と建物登記簿の2種類がある。
・・・と定義されますが、イメージが湧かないので見本を見てみましょう。
このように、登記簿は大きく「①表題部」「②権利部(甲区と乙区がある)」から構成されます。
それぞれの記載項目は
①表題部には土地または建物の所在地番、面積など
②権利部の甲区には所有権に関する事項、
乙区には所有権以外の権利(抵当権、地上権等)に関する事項
現行法では、「①表題部」について表示登記の義務があります。
「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。(不動産登記法47条)」とされています。
とはいえ、表題登記がされていない未登記の家屋は多数あります。
そして「②権利部」の変更登記義務がないことで、多くの所有者不明土地が社会問題となっています。一説によると、所有者不明土地は九州の面積を超えるそうです。
相続登記申請の義務化
このような所有者不明土地に関する問題の解消策のひとつとして、令和6年4月1日より相続登記申請が義務化されます。
不動産の所有権の名義人に相続が開始したときに、自己のために相続が開始されたことを知り、かつ自分が所有権を取得したときから3年以内に所有権移転登記をしなければならない。(行わない者に対しては、10万円以下の過料が課される)
なお、相続登記の義務化は、施行日前に相続の開始があった場合についても適用されます(遡及適用)
所有者不明土地問題のそのほかの解消対策
実は、現行でも相続登記の促進を目的として「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」を送付するなどの所有者不明土地問題の解消対策は行われていましたが、効果は限られ、相続後に放置される土地は増え続けるばかりでした。
そこで、前述の「相続登記申請の義務化」だけではなく、下記の問題解消対策が、同じく令和3年に公布されました。
1、民法の一部を改正する法律(施行:令和5年4月1日)
①相隣関係
管理者不明土地などの隣地使用権が見直され、境界調査・ライフライン設置・竹木の枝切除等が一定の条件下で隣地所有者の承諾なく可能になります。
②共有関係規定
現行では共有持分者全員で行為していた不動産の処分(売却)について、持分譲渡権限付与の裁判が可能になります。変更・管理行為についても、不明者以外が裁判可となり、今まで放置するしかなかった不動産の活用が期待されます。
③所有者不明土地管理制度
不動産単位の管理制度を定めることにより、崩壊寸前の建物やゴミ溜まりの土地の適切な管理や、活用に期待がされます。
2、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(施行:令和5年4月27日)
相続等により取得した土地(建物や、建物の存する土地等は対象外)について国庫帰属への承認を求められるようになります。承認された場合には10年分の管理費相当額の負担金を納付することで、土地の所有権が国庫に帰属します。
まとめ
このたびの法改正の要点は
①相続登記申請の放置ができなくなる!
②所有者不明であきらめていた隣地活用が可能となる!
③共有持分者不明であきらめていた不動産の活用に希望が持てる!
④放置不動産の減少により、国土の適切な管理と活用を期待できる!
ということで、大多数の方にとっては、相続後の手続き、義務が増えるなんてめんどくさいなぁ。という話かもしれません。
しかし、少数ではありますが、隣地に不明者がいる・共有持分者がわからない・近所のゴミ屋敷に困っているなど、暮らしへの支障が甚大な問題に解消の糸口が見える良い法改正だと感じます。
近年増加する自然災害の対策としても、管理者のいない不動産が減る未来を歓迎します。
法改正の影響が実務にどう現れるのか、始まらないとわからない部分はありますが、不動産トラブルでお困りの方の救いとなるような運用に期待しながら施行を待ちましょう!
R産託コンサルタンツは『宅建Dr.』を推奨し、常に最新法令を遵守しています。
不動産を取り巻く環境は近年激変しておりますので、お困りごとは放置せず、お気軽にご相談くださいませ。
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