正直不動産副読本④「タワーマンション」
2024年01月22日
NHKにて好評の山ピー主演の「正直不動産」お正月スペシャルに、2の放映開始★
不動産屋の悪行を世間に知らしめる本当に良いドラマです。
2022年に出版された正直不動産公式副読本「不動産業者に負けない24の神知識」という書籍でも悪い不動産屋のあの手この手を紹介しております。
正直不動産を自負するR産託コンサルタンツとしても、これは無視できません。
弊社なりに、事例解説を行いますので、皆様の一助になれば幸いです。
第四章『タワーマンション』
タワーマンション、通称タワマン、一般的には20階建以上・高さ60m超の超高層マンションを指しますが、法的に定義されている言葉ではありません。
構造上の安全性が基準に達しているものであることや、耐火の性能、スムーズに避難できる建物かなど建築基準法で定められた項目を合格した建物で、国土交通大臣からの認定を受けて建設されていますが・・・
消防車のはしごが届かない(非常用エレベーターや屋上ヘリポートで対応)、大規模修繕問題(特殊足場を要することで嵩む経費や時間)といった心配も尽きず、売る人も多いのです。
中には購入当初より再販売を目的とする(投機目的)の方もいます。
今回はそんな投機目的に「相続対策のスキーム」を掛け合わせた事例を紹介します。
具体事例
「タワマン節税」という言葉を聞いたことはありますか。
購入価格(時価)より相続税の申告額(相続税評価額)が大幅に低くなるというタワーマンションの特徴を生かした相続税の節税スキームです。
相続人が引き続き利用するマイホームなどは、時価よりかなり低い価格にて相続税の計算ができるため、現金(時価で計算される)をタワマンに変えておくことが節税になり得ます。
さらに・・・相続人が、買った価格よりも高く売るケースもあるのが投機的なところ。
タワマンは建物そのものが街のシンボルであることも多く、タワマンが建設されたことで街の魅力も増した場合など、新築時より中古の方が高いケースがございます。
あからさまなケースでは、
① 年老いた父がタワマンを購入する
② 数年後に相続発生
③ 節税した価格にて相続税を納税
④ 取得価格より高く再販売
といった節税×投資成功で二度おいしい!ということをした方もいます。
もちろん、おいしいばかりではなく、苦い経験をした方もいます。
令和4年4月には「タワマン節税裁判」と呼ばれる、相続開始前に自己資金や金融機関からの借入を原資としてタワーマンションを購入し、相続税の節税を行うスキームについて、納税者と国税当局が争った裁判の判決がくだされました。地裁・高裁・最高裁すべてで、納税者側が敗訴しています。
税制改正はタワマン節税を止めるのか?
行き過ぎたタワマン節税、相続財産の再評価を行う上記のような裁判が頻発しました。
そこで時価と評価の乖離率を考慮するための改正案が審議され、タワマンの評価方法はこの令和6年1月1日、財産評価基本通達の改正にて変更済です。
参考までに計算式:現行の相続税評価額×評価乖離率(該当する部屋の「築年数」と「総階数(総階数指数)」、「所在階」、「敷地持分狭小度」より個別に算出する)・×最低評価水準0.6 です。
とはいえ時価よりも安価であることは変わらず、タワマン節税スキームは終わらない!と意見する専門家もいるようです。
ここで注目すべきはもうひとつの相続税法等の改正です。
相続財産が後で再評価されちゃうなら、生前贈与で先にもらってこう♪少額の贈与であれば、贈与税の負担の方が相続税よりも小さいから!
ということで「暦年贈与」にて財産を小分けにし、さらに年度も分けて贈与をしていきますと、高額なほど高くなる相続税の累進性により高税率となる財産を減らせるというスキームがあるのですが・・・
令和6年1月1日相続税法と租税特別措置法にて、この暦年課税も不利になってしまいました。
今までは、相続開始前3年分の贈与額は相続財産として、一辺に計算されることになり、累進性により相続税が高くなることがあったのですが、この度の改正にてこの遡る期間が「7年」に延長されました。
こちらの詳細はまた別の機会に紹介しようと思います。
結局
天国にお金は持っていけないのだから、次世代に譲って逝こうというのが今までの税法だとすれば(相続税より贈与税が安価な方法が存在するという意味)
改正税法は死ぬ直前に譲っても無意味。元気なうちから次世代に資金移動しようね?ということでしょうか。
現役世代に活力がないのが嘆かれます。。。
高度成長する日本、もう一度みたいなぁ。。。という虚しい呟きで締めてごめんなさい。
次回『既存不適格マンション』では心をえぐるダークな話をしたいと思います!
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