正直不動産副読本⑥負動産
2024年12月17日
NHKにて好評の山ピー主演の「正直不動産」は、不動産屋の悪行を世間に知らしめる本当に良いドラマです。
2022年に出版された正直不動産公式副読本「不動産業者に負けない24の神知識」という書籍でも悪い不動産屋のあの手この手を紹介しております。
正直不動産を自負するR産託コンサルタンツとしても、これは無視できません。
弊社なりに、事例解説を行いますので、皆様の一助になれば幸いです。
第六章『負動産』
負動産とは、所有しているだけで負担になる不動産という意味の造語ですが、この言葉を使って相続対策を喚起する業者や税理士等が増え、どこかで聞いたことがある人も多いかもしれませんね。
どのような物件が負動産になり得るのか?
まずは災害リスクの高い物件
・山林のため不便で土砂災害のリスクも高い
・沿岸部で津波のリスクが高いなど
次に活用が困難である
・田舎すぎる実家
・再建築不可・市街化調整区域など
そしてトラブルを内包するもの
・私道の取り決めがない
・越境にて隣人と揉めている
・所有する塀や擁壁が壊れそうで危険など
最後に告知事項や事件性のある物件
・入居者が亡くなった貸家
・騙されて買った「宅地」など
聞いただけで遠慮したい・・・そんな負動産ですが最後の騙されて買った「宅地」について、希望のもてるケースを紹介します。
具体事例
日本経済が伸びていた1970~80年代頃、こんな勧誘が流行りました。
「将来高値で売れる」との文句で、山林や原野や市街化調整区域の土地を売りつける営業(中には詐欺もありました)です。
その勧誘に乗ったO田様のお話しです。(情報保護のため多少の脚色があります)
・今は調整区域ですが、いずれここも建築可能になります!
・なぜなら経済が成長し、人も増えているので、住むところが足りなるから!
・土地値は上がるので転売利益が出るのは間違いないです!
そんな文句に誘われて、O田様は福岡市某区に100坪の土地(坪/10万円)を購入します。
1,000万円の安くはない買い物でした。
勧誘文句の通りに
そして勧誘文句の通り、住宅地が不足したF市の都市計画は見直され、市街化調整区域であった土地が「市街化区域」になりました。
バブルの絶頂で坪単価も20万円に上昇!これはどこまで上がるか楽しみだ。
そんな風にO田様が自分の先見の明に酔っていた1991年、ご存じの通りバブルは弾けました。
O田様の土地は、建築可能ではあるものの福岡市の辺境、住宅はほとんどなく閑散としたままです。
日本経済は低迷し土地値は下がる一方、不安になったO田様が業者に相談すると「坪5万円なら売れるかもしれませんね~」と当初の取得費以下の評価を受ける始末。
あのとき売っていれば・・・後悔先に立たずとはこのことです。
再び地価が上昇する
バブルが弾けて約30年かけてふたたび勧誘文句の通りの状況が訪れました。
ご存じの方も多いと思いますが、福岡市の土地の需要増による地価上昇は今、バブル時を越えています。O田様の土地も再び地価が上昇し、近隣の取引事例も坪単価25万!32万!40万!と威勢の良い状況です。今度こそとO田様はご売却により利益確定を成し遂げられました。
あくまでレアケース
この事例はあくまでレアケースです。
本当に市街化区域になったこと、そこに住みたい人が増えたこと、結果地価が元値より上昇という好条件が欠けることなく揃った結果です。
「どうしようもない土地」なのに「宅地」として購入したケースは残念ながら挽回できません。
原野商法にて「山林」を買った方、詐欺にて「本人の認識よりも狭い土地(40坪のつもりが40㎡など)」を買った方、宅地開発なんか進まずに「草木が生え放題の僻地の宅地」を買った方、負動産は負担のままという方が圧倒的に多いです。
それでも辛抱強く待ち続ければ、地価が上昇することもあるかもしれませんが・・・所有者には物件の管理責任がありますのでご注意ください。
最新事情
弊社は正直な不動産会社であるため、決断に必要な情報を隠すことは許さない立場ですが、昨今、平成の終わり頃に無知なサラリーマン大家さんに「不利益な事実を“あえて”告げずに」買わせた物件で、長期譲渡の期間になり売却を検討したところプロでないと気付かない問題が発覚するケースが増えています。
・道路に所有権(持分)はないが位置指定道路だから大丈夫
・隣接する建物と越境があるが「口頭で」承諾があるから大丈夫
・擁壁の検査済証はないが「確認申請はある」から大丈夫
すべて大丈夫じゃないケースが多々あります。
そして2020年の民法改正により、今の売主様は知らなかったからでは逃げられません。
慌てて当時の売主や仲介業者に責任追求するも、こちらは旧民法や時効で処分はできないなど、安易に買った大家さんが泣きをみるということも。。。
しかし、不動産の購入を決めるのは大家自身なのです。
高い買い物だからこそ、おいしい話だけではなくリスクも理解して保有することが大事です。
どうか不安なまま取引しないでください。同業他社には嫌われることですが弊社ではセカンドオピニオンも実施していますので、なんなりとご相談頂けますと幸いです。
今回のコラムをもって、正直不動産公式副読本「不動産業者に負けない24の神知識」より【売買編】は完結です。ご愛読誠にありがとうございました。